
昨年度、10年で3倍に増加
相続人が不在で国庫に入る財産が2023年度に1015億円となったことが、
最高裁への取材で分かりました。
これは10年前の336億円と比べて約3倍に増加し、初めて1000億円を超えました。
背景には、配偶者や子どものいない単身高齢者の増加があり、
今後もさらに増え続ける可能性が高いと考えられています。
相続土地国庫帰属制度の開始
相続時に登記されないことなどによる「所有者不明の土地」が全国的に問題となる中、
2023年4月には国が不要な土地を引き取り国有地とする「相続土地国庫帰属制度」が始まりました。
これにより、土地の管理負担を軽減することが目的とされていますが、
その他の資産についても相続人がいない場合、最終的に国庫へ帰属する仕組みとなっています。
国庫帰属遺産の使途
最高裁によると、2023年度に国庫に帰属した財産は1015億5027万円で、
前年度の768億9444万円から32%増加しました。
財務省によれば、これらの遺産の使途は明確には決まっておらず、
国の歳出の一部に充てられる形となっています。
「相続財産管理人」の選任増加
相続人が存在せず遺言もない場合、国や自治体、利害関係者が
「相続財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立て、財産の整理を任せることになります。
未払いの公共料金や税金などの債務を清算した後、残った財産が国庫に入る仕組みです。
最高裁の調査によると、相続財産管理人の選任申し立ては2019年以降、
毎年増加しており、2023年は前年比4%増の計6948件となりました。
単身高齢者の増加と今後の見通し
「相続人なき遺産」が増えている大きな要因の一つが、単身高齢者の増加です。
厚生労働省の2023年の国民生活基礎調査によると、65歳以上の人口3952万7000人のうち、
「単独世帯」は21.6%(855万3000人)でした。
これは10年前の17.7%から増加しており、高齢者の一人暮らしが増えていることが分かります。
また、国立社会保障・人口問題研究所の2024年の推計では、
2050年には65歳以上の一人暮らしが1084万人に達するとされています。
その中でも未婚者の割合は、男性が6割、女性が3割になる見通しです。
遺言を活用した「遺贈寄付」の選択肢
相続人がいない場合、遺言を残さなければ遺産の使い道は国の裁量に委ねられます。
しかし、遺言を作成し、NPO法人や慈善団体へ寄付する「遺贈寄付」という選択肢もあります。
遺贈寄付とは、自分の財産の一部または全部を生前に遺言で指定し、
NPO法人や公益法人、学校、病院などの団体へ寄付する制度です。
これにより、自分の意志に沿った社会貢献が可能になります。
また、遺贈寄付を活用することで、社会福祉や教育、環境保護など特定の分野に遺産を役立てることができます。
相続人のいない遺産が増加する中で、遺言の重要性がますます高まっています。
国庫に帰属する遺産は使途が明確に決まっていないため、
自分の意思を反映させるには遺言を作成することが必要です。
単身高齢者の増加により、今後も相続人不在の財産が増えることが予想されるため、
早めの対策を講じることが重要です。