政府は、老朽物件の再生を促進するため、マンションの改修や取り壊しに必要な住民の同意要件を
緩和する方針を固めました。
現在は区分所有者全員の賛成が必要ですが、新たな制度では5分の4以上の賛同があれば実施可能となります。
この改正案は今国会に提出され、成立すれば2026年4月にも施行される予定です。
1棟丸ごとリノベーションや取り壊し・売却のハードルを下げる
今回の改正では、マンション再生の手法として「1棟丸ごとリノベーション」や「取り壊し・売却」など
7つの方法が対象となります。
これらはいずれも現在は所有者全員の合意が必要ですが、改正後は5分の4の賛成で実施可能となります。
さらに、耐震不足やバリアフリー基準の不適合といった緊急性の高いケースでは、
合意要件を4分の3以上に引き下げる措置も導入されます。
建て替えの際の税制優遇措置の拡充
マンションの建て替えの際には、住民らで設立する事業組合に対して税制上の優遇措置が適用されます。
今回の改正では、その適用範囲を拡大し、多様な再生手法に対応できるようにすることで、
円滑な建て替えを支援します。
老朽物件の増加に対応するための制度改正
高度経済成長期以降に建設されたマンションが老朽化する中、国土交通省のデータによると、
築40年以上のマンションは2023年末時点で137万戸あり、2043年末には464万戸と3.4倍に増加する
見込みです。
また、所有者の高齢化も進んでおり、2023年度には築40年以上のマンションの55%で世帯主が70歳以上でした。所有者の死亡や変更未届けにより、再生の決議が困難なケースも増えています。
マンション管理の適正化も推進
今回の改正案では、マンションが適正に管理される仕組みの整備も進められます。
具体的には、不動産会社が新築時に管理計画を作成し、国が認定して管理組合に引き継ぐ制度が新設されます。
また、自治体の関与も強化され、外壁が落下するなどの危険なマンションに対して管理組合に報告を求めたり、
管理の専門家を派遣するための支援策が導入されます。
今回の改正により、老朽物件の再生がスムーズに進みやすくなります。
特に、耐震性やバリアフリーの問題を抱えるマンションでは、より早期に対策を講じることが可能になります。
また、適正な管理体制の強化により、将来的なマンションの老朽化リスクを低減する仕組みが整備されることが
期待されます。
マンションの維持・管理に関わるすべての関係者にとって、大きな転換点となる法改正となるでしょう。